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痔に効く漢方とは?乙字湯など代表処方と体質別対策

乙字湯とは

痔は日本人にとって非常に身近な疾患であり、生活習慣や体質によって悪化しやすい特徴があります。近年では、薬や手術だけでなく、体の内側から改善を目指す「漢方療法」に注目が集まっています。漢方では痔を単なる局所の炎症としてではなく、血流の滞りや冷え、便秘といった全身の巡りの乱れとして捉えます。

本記事では、痔の種類や原因を整理しながら、乙字湯をはじめとする代表的な漢方薬と、日常生活で取り入れたい改善習慣について解説します。

この記事を読むと理解できること
  • 痔は血流・冷え・便秘など体全体の巡りの乱れから起こる
  • 乙字湯を中心とした漢方薬が体質改善と炎症緩和に有効
  • 食事・運動・冷え対策など生活改善で再発予防が可能
  • 症状が続く場合は漢方と併用して専門医の受診が重要

痔とはどういう状態か

  • 痔の主な種類と発症メカニズム
  • 漢方的にみる“痔”の原因(瘀血・冷え・便秘など)

痔の主な種類と発症メカニズム

痔(じ)は、肛門周辺の血管や粘膜、皮膚に炎症や腫れ、出血、痛みが生じる疾患の総称です。日本人の約3人に1人が一度は経験するといわれるほど身近な疾患であり、生活習慣や体質が深く関係しています。痔には大きく分けて3つのタイプがあります。

1. いぼ痔(痔核)

最も一般的なタイプで、肛門内外の静脈がうっ血し、こぶのように腫れ上がった状態です。長時間の座り仕事、便秘、妊娠・出産などが主な原因とされています。特に、排便時に強くいきむ習慣があると、肛門内の血流が滞り、血管が膨張して痔核が形成されます。

2. 切れ痔(裂肛)

肛門の皮膚が裂けて痛みや出血を伴うタイプです。硬い便の排出や慢性的な便秘が主な原因で、便が肛門を通る際に傷をつけてしまいます。排便時の強い痛みが特徴で、痛みを避けるために排便を我慢し、さらに便が硬くなるという悪循環に陥りやすいのも特徴です。

3. あな痔(痔ろう)

直腸と肛門の間に膿の通り道ができてしまう状態です。細菌感染が原因で、内部に膿がたまり、それが皮膚側に破れて穴が開くことで発生します。慢性化しやすく、自然治癒は難しいため、外科的治療が必要になることが多いです。

発症のメカニズム

痔の発症には、「血流の滞り」「排便習慣の乱れ」「冷え」などが大きく関与しています。肛門は非常に細い血管が集まる場所であり、血流が悪くなると炎症や腫れが起きやすくなります。長時間の座位、運動不足、偏った食事などがこれを助長します。
このように、痔は一つの症状ではなく、複合的な要因によって生じる“循環障害”ともいえる疾患です。

漢方的にみる“痔”の原因(瘀血・冷え・便秘など)

漢方では、痔は単なる局所の炎症ではなく、全身の「気・血・水(き・けつ・すい)」の巡りが乱れた結果として現れる症状のひとつと考えます。特に、「瘀血(おけつ)」「冷え」「便秘」の3つは、痔の発症と悪化に深く関係しているとされています。

1. 瘀血(おけつ) — 血の巡りが滞る状態

「瘀血」とは、血流が滞り、体内に老廃物や熱がこもってしまう状態を指します。肛門周辺は細い血管が密集しているため、ここに瘀血が生じると、腫れや痛み、出血が起きやすくなります。漢方では、この瘀血を改善するために「血行を促す(活血)」作用を持つ処方を用います。代表的なものに、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)や桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などがあります。これらは血の巡りを整え、炎症の沈静化を助けるとされています。

2. 冷え — 下半身の循環を悪くする要因

下半身の冷えは、血流をさらに滞らせ、瘀血を悪化させる原因になります。特に女性では、冷えによる痔の悪化が多く見られます。漢方では、体を温める「温補」作用のある薬草(例:附子、乾姜など)を配合し、体全体の巡りを改善します。体が温まることで、炎症や痛みの軽減が期待できます。

3. 便秘 — 痔を悪化させる最大の生活要因

便秘は、痔を引き起こす直接的な要因のひとつです。硬い便が肛門を傷つけるだけでなく、排便時のいきみが血流を悪化させ、いぼ痔や切れ痔の原因となります。漢方では、便通を整える「潤腸」「通便」作用のある処方(例:麻子仁丸、桂枝加芍薬湯など)が用いられます。これにより排便をスムーズにし、肛門への負担を軽減します。

総括

漢方的には、痔の症状を「部分的な疾患」とは見なさず、「体の巡りの乱れが局所に現れたもの」として捉えます。そのため、患部のケアだけでなく、体質改善を同時に進めることが重要です。体のバランスを整えることで、再発しにくい状態を作ることが、漢方治療の目的でもあります。

痔に効くとされる漢方とその使い方

  • 代表的な漢方処方(例:乙字湯)とその特徴
  • 日常で併用すべき生活習慣・注意点

代表的な漢方処方(例:乙字湯)とその特徴

痔に対して用いられる漢方薬は数多くありますが、その中でも代表的なのが「乙字湯(おつじとう)」です。乙字湯は、いぼ痔・切れ痔の改善を目的として、江戸時代から使用されてきた伝統的な処方で、現在でも医療機関や薬局で広く採用されています。

1. 乙字湯の基本構成と作用

乙字湯は、「黄芩(おうごん)」「柴胡(さいこ)」「升麻(しょうま)」「当帰(とうき)」「甘草(かんぞう)」「大黄(だいおう)」の6つの生薬から構成されます。
このうち、当帰と柴胡が血の巡りを整え炎症を鎮め、黄芩と升麻が熱を冷ます作用を持ちます。大黄は緩下作用を持ち、便秘の改善を助ける一方で、甘草は炎症を和らげる緩衝役として働きます。

これらのバランスにより、乙字湯は「炎症を抑えつつ、血流を促し、便通を整える」という3つの方向から痔の症状を改善していく処方です。

2. 主な適応と特徴

乙字湯は、特に「排便時の痛み」「出血」「腫れ」などが見られるいぼ痔や切れ痔に適しています。漢方医学的には、「気滞(きたい)」「瘀血(おけつ)」「熱毒(ねつどく)」が同時に存在する状態とされ、これらを総合的に緩和します。
慢性的な痔だけでなく、再発を繰り返すタイプにも用いられることが多いです。服用を続けることで、炎症が鎮まり、排便時の痛みや不快感が次第に軽減していくとされています。

3. 乙字湯以外によく用いられる処方

  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):血行不良(瘀血)による痛みや腫れに
  • 桃核承気湯(とうかくじょうきとう):便秘傾向が強く、体に熱がこもるタイプに
  • 麻子仁丸(ましにんがん):便通を改善し、排便時の負担を軽くする
  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):冷えやむくみを伴う女性の体質改善に

これらの処方は、体質や症状によって使い分けられます。痔の原因が「血の滞り」「便秘」「冷え」のどれに重点があるかによって、最適な漢方薬が異なります。

4. 服用時の注意点

漢方薬は自然由来ではありますが、体質に合わないと効果が出にくい場合があります。また、乙字湯には「大黄」が含まれるため、下痢傾向の人や胃腸が弱い人は慎重に用いる必要があります。自己判断での長期服用は避け、薬剤師や漢方医の指導を受けることが推奨されます。

日常で併用すべき生活習慣・注意点

漢方で痔の改善を目指す際は、薬の服用だけでなく、日常生活の見直しが非常に重要です。痔は血流の滞りや便秘など、生活習慣に強く影響される疾患であり、体の巡りを整える習慣を取り入れることで、漢方の効果を高め、再発を防ぐことができます。

1. 排便習慣を整える

痔の最大の悪化要因は「便秘」と「強いいきみ」です。毎日決まった時間に排便する習慣をつけ、便意を我慢しないことが大切です。朝食後は胃腸の動きが活発になるため、トイレに行く時間を確保しましょう。また、硬い便を避けるために、**水分を十分に摂る(1日1.5〜2L程度)**ことも重要です。
食物繊維を豊富に含む野菜・海藻・豆類をバランスよく摂取することで、便通の改善が期待できます。

2. 体を冷やさない工夫

漢方では「冷えは万病のもと」とされ、痔の原因の一つでもあります。特にデスクワークなどで長時間座る人は、下半身の血行が悪くなりやすいため、意識的に体を温める習慣が必要です。
湯船にゆっくり浸かる、下半身を冷やさない服装を選ぶ、軽いストレッチやウォーキングを取り入れるなど、血流を促す生活を心がけましょう。

3. 長時間の座位を避ける

座りっぱなしの姿勢は、肛門部の血管に負担をかけ、血流を滞らせます。仕事中は1時間に1回程度、軽く立ち上がって体を動かすことで血行を改善できます。
また、クッション性のある座布団を使用すると、肛門への圧力を軽減できます。ドーナツ型のクッションは、患部を直接圧迫しないためおすすめです。

4. 食生活とアルコール・刺激物の制限

香辛料やアルコールは血流を急激に変化させ、炎症を悪化させることがあります。辛い食べ物、コーヒー、アルコール類は控えめにし、腸内環境を整える発酵食品(味噌・納豆・ヨーグルトなど)を意識的に取り入れましょう。
また、夜更かしやストレスも自律神経を乱し、血行不良を引き起こすため、十分な睡眠を取ることも大切です。

5. 定期的な経過観察と専門医相談

漢方で改善が見られる場合でも、出血や痛みが続く、腫れがひかないといった症状がある場合は、早めに肛門科を受診することが望ましいです。
痔の中には、感染や腫瘍など別の疾患が隠れているケースもあります。漢方はあくまで「体質改善の一助」であり、必要に応じて現代医療と併用することが安全で効果的です。

まとめ 痔と漢方に関する要点まとめ

記事のまとめ
  • 痔は肛門周辺の炎症や腫れなどを含む総称である
  • 主な種類は「いぼ痔」「切れ痔」「あな痔」の3つである
  • いぼ痔は血管のうっ血、切れ痔は裂傷、あな痔は感染によって起こる
  • 発症の背景には血流の滞りや冷え、排便習慣の乱れがある
  • 漢方では痔を全身の「気・血・水」の乱れとして捉える
  • 瘀血(おけつ)は血の巡りが悪く、腫れや痛みを引き起こす
  • 冷えは下半身の血流を悪化させ、痔の症状を悪化させる
  • 便秘は排便時のいきみを増やし、痔を悪化させる最大要因である
  • 乙字湯は痔に広く使われる代表的な漢方薬である
  • 乙字湯は血行促進、炎症緩和、便通改善の三方向から作用する
  • 桂枝茯苓丸や桃核承気湯なども体質に応じて使い分けられる
  • 漢方は体質や症状に合わせて専門家の指導のもとで用いるべきである
  • 痔の改善には排便習慣、水分摂取、冷え対策が不可欠である
  • 食事・運動・睡眠など生活全体の見直しが予防につながる
  • 症状が長引く場合は漢方と併用して肛門科を受診することが重要である

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