痔や便秘に悩む方の中には、「乙字湯」と「ピーチラック乙字湯」のどちらを選べば良いか迷う方も多いでしょう。どちらも同じ漢方処方を基にしていますが、医療用と市販用では成分量や効果の現れ方が異なります。
本記事では、乙字湯とピーチラック乙字湯の基本成分・効能・違い・選び方を分かりやすく整理し、症状や体質に合った選択の参考になるよう解説します。
乙字湯とピーチラック乙字湯の基本情報

乙字湯とは何か/処方の成分と効能
「乙字湯(おつじとう)」は、江戸時代の日本人漢方医 原南陽 によって考案された漢方処方で、主に「便がかたく便秘傾向があり、痔(いぼ痔・きれ痔)・軽度の脱肛」といった症状に用いられてきました。
この処方が注目されるポイントとして「便通を整える」「肛門付近の血流を改善する」「腫れ・出血・痛みを和らげる」という三つの効能があります。
成分構成
典型的な成分は以下の通りです。
- 当帰(トウキ)
- 柴胡(サイコ)
- 黄芩(オウゴン)
- 甘草(カンゾウ)
- 升麻(ショウマ)
- 大黄(ダイオウ)
これらの生薬が組み合わされることで「熱を冷ます・うっ血を除く・便を通す」という漢方的な働きを果たします。たとえば、黄芩や大黄は腸内の「熱」を冷まし便通を促す役割をもち、当帰は血を補いながら痛み・出血を和らげるという説明があります。
効能・適応症
具体的な効能・適応症は次のように定められています。
「体力中等度以上で、大便がかたく、便秘傾向のものの次の諸症:痔核(いぼ痔)、きれ痔、便秘、軽度の脱肛」 KEGG
つまり、比較的体力のある人(極度に衰弱していない)で、便秘傾向があり、かつ痔や排便時の痛み・出血・脱肛がともなうようなケースに適用される処方です。漢方理論では「肛門周辺に“瘀血(おけつ)=滞った血”がある状態」「便がかたくて排便時に肛門の血流・組織に負担がかかる状態」と捉えられています。
使用時の注意点
使用にあたってはいくつかの注意点があります。たとえば、処方には甘草が含まれており、長期・大量の使用で高血圧や低カリウム血症を招く可能性があるため「血清カリウム値・血圧値等に十分留意」する必要があります。
また、症状・体質に応じて用量を調整すること、併用薬との重複生薬に注意すべきであることも明記されています。
ピーチラック乙字湯とは/市販製品の特徴と成分の違い
ピーチラック乙字湯(ピーチラックOtsujito)は、クラシエ薬品など複数メーカーから販売されている一般用医薬品(第2類医薬品)で、漢方処方「乙字湯(おつじとう)」を基礎とした市販薬です。
医療機関で処方される乙字湯と同じく、主にいぼ痔、きれ痔、便秘、軽度の脱肛といった症状に用いられますが、医師の処方箋なしで購入できるのが大きな特徴です。
成分構成と処方の違い
ピーチラック乙字湯の成分は、基本的に医療用の乙字湯と同一の6種類の生薬(当帰、柴胡、黄芩、甘草、升麻、大黄)を含んでいます。
ただし、市販薬では配合量や剤形(エキス量)が異なる場合があります。
たとえば、クラシエのピーチラック乙字湯エキス錠は、以下のように規定されています(成人1日量・6錠中):
乙字湯エキス(1/2量)2,000mg(乙字湯原生薬量換算で約4g)
- トウキ 1.5g
- サイコ 1.5g
- オウゴン 1.5g
- カンゾウ 1.0g
- ショウマ 0.5g
- ダイオウ 0.5g
このように、市販品では服用しやすい錠剤や顆粒剤に加工されており、体格や症状に合わせて自宅で使用できるよう調整されています。
医療用と比較すると、配合量がやや少ない半量処方となっているケースが多く、副作用リスクを抑えつつ、日常的な軽症の痔や便秘に適するよう設計されています。
用法・用量
一般的な成人用量は、1回2錠を1日3回、食前または食間に服用します。
食後ではなく「食間(食事と食事の間、食後2〜3時間)」に服用する点が特徴で、これは漢方の吸収を高めるための一般的な服用タイミングです。
15歳未満の子どもには使用できない製品も多く、パッケージ記載の年齢区分を確認することが推奨されています。
特徴と利便性
ピーチラック乙字湯は、薬局やドラッグストアで購入できるため、
- 受診せずに自宅で手軽に試せる
- 持ち運びしやすい錠剤形状
- 緩やかに作用し、副作用が比較的少ない
といった利便性があります。
その一方で、症状が重度(激しい痛みや出血、長期化など)の場合は、市販薬の使用のみでは十分な改善が得られないこともあるため、医療機関の受診が推奨されます。
医療用との細かな差
ピーチラック乙字湯の処方は「乙字湯そのもの」ですが、医療用ではエキス量が多く、より強い効果を期待できるケースがあります。
一方、市販品は安全性・汎用性を優先しており、体質や軽症の痔に向くマイルド処方となっています。
また、メーカーにより添加物(乳糖、セルロース、ステアリン酸マグネシウムなど)が異なり、錠剤タイプや顆粒タイプなど選択肢が豊富なのも特徴です。
乙字湯とピーチラック乙字湯の違いと選び方

医療用と市販用の成分・規制・効果の違い
乙字湯とピーチラック乙字湯は、どちらも同じ漢方処方に基づいて作られていますが、医療用(処方薬)と市販用(一般用医薬品)では、成分量・規制・効果の現れ方などに明確な違いがあります。ここでは、両者の相違点を制度面・成分面・効果面から整理して解説します。
① 医療用と市販用の制度上の違い
まず、医療用の乙字湯は「医師が診断し、処方箋に基づいて調剤される医療用漢方薬」です。
これに対し、ピーチラック乙字湯のような市販薬は「薬局で購入できる一般用医薬品」であり、医師の診断を受けずに自己判断で服用できます。
- 医療用漢方薬:医師の診断と処方が必要
- 市販用漢方薬:薬剤師の説明を受ければ購入可能
医療用は保険適用で処方されるため、費用を抑えつつ継続服用がしやすい一方、市販薬は即日購入できる手軽さが特徴です。
② 成分・含有量の違い
医療用の乙字湯は、一般に「原生薬量が多い(1日分あたり約7.5g前後)」のが特徴です。
一方、市販のピーチラック乙字湯は「その約半量(3.5〜4g程度)」の生薬エキスを含み、穏やかに作用します。
このため、医療用の方が便通改善や炎症抑制の効果がやや強い傾向があります。
また、市販薬では製剤の安定性や飲みやすさを高めるために、乳糖・セルロースなどの添加物を使用しています。
剤形も顆粒・錠剤タイプが中心で、医療用より保存性が高く、家庭常備薬として扱いやすい形に設計されています。
③ 効果の現れ方・適応の範囲
医療用乙字湯は、医師が体質や症状に応じて用量を細かく調整できるため、個々の状態に合わせた効果を発揮しやすいのが特徴です。
特に、便秘傾向が強く、出血や腫れを伴う痔に対しては、医療用の方が短期間で症状が軽減しやすいとされています。
一方、市販のピーチラック乙字湯は、「軽症〜中等症の痔・便秘・脱肛」に対応するようマイルドに作用します。
即効性よりも、体質を整えながら症状を緩やかに改善することを目的としており、長期的なセルフケアに適しています。
④ 安全性と副作用のリスク
どちらも同じ処方構成のため、基本的な副作用リスクは共通しています。
特に注意が必要なのは、甘草(カンゾウ)による偽アルドステロン症(むくみ、血圧上昇、低カリウム血症)です。
医療用は生薬量が多いため、長期服用や併用時には医師の管理下が望まれます。
市販薬の場合は含有量が少ない分、安全性が高く、自己管理でも使用しやすい設計です。
症状・体質・入手方法で見る使い分けのポイント
乙字湯とピーチラック乙字湯は、どちらも同じ処方をもとにしていますが、選ぶべき製剤は「症状の程度」「体質」「入手のしやすさ」によって異なります。ここでは、実際に選択する際の目安を整理します。
① 症状の程度での使い分け
乙字湯は、便秘を伴ういぼ痔やきれ痔、軽度の脱肛に効果がある処方ですが、症状の重さによって適切な製剤が変わります。
| 症状レベル | 推奨される製剤 | 理由 |
|---|---|---|
| 軽度(排便時の痛みや出血が軽い) | ピーチラック乙字湯 | 作用が穏やかで、日常の便通調整にも使いやすい |
| 中等度(腫れや痛みが続く・便がかたい) | どちらも可。市販薬で改善しなければ医療用へ | 状態に応じて選択、自己ケアから医療へ切り替え可能 |
| 重度(脱肛、強い痛み、出血が多い) | 医療用乙字湯(医師処方) | 成分量が多く、医師の管理下での治療が望ましい |
このように、軽症・慢性型の痔や便秘には市販薬で十分対応できますが、出血が長引く・痛みが強い・再発を繰り返すといった場合には、医療機関での診察が必要です。
② 体質による選び方
乙字湯系の処方は、「体力が中等度以上」「便秘傾向」「のぼせやすい」「肛門部の熱感・腫れがある」といった体質に適しています。
反対に、体が虚弱で冷えが強いタイプや下痢傾向のある人は、乙字湯では刺激が強すぎる場合があります。
- ピーチラック乙字湯:体力中等度〜弱め、軽度の便秘や痔に向く
- 医療用乙字湯:体力中等度〜強め、明確な便秘・炎症症状に向く
自分の体質に合わない場合は、服用しても改善がみられないことがあるため、薬剤師や漢方専門医に相談するのが望ましいです。
③ 入手方法と費用面での比較
| 項目 | 医療用乙字湯 | ピーチラック乙字湯 |
|---|---|---|
| 入手経路 | 医師の処方 | ドラッグストア・通販 |
| 保険適用 | あり(自己負担1〜3割) | なし(全額自己負担) |
| 即時入手 | 不可(受診が必要) | 可(薬局で購入可能) |
| 価格帯 | 処方薬:約500〜1000円/日数分 | 市販薬:1箱15〜30日分で1500〜2500円前後 |
市販薬は受診不要で手に入る手軽さが魅力ですが、医療用は長期的に見ると保険が使えるため経済的です。症状の程度や生活スタイルに合わせ、まずは市販薬→改善が乏しければ医療機関というステップが現実的です。
④ 使用期間と再評価の目安
ピーチラック乙字湯は、基本的に2週間ほど継続しても改善が見られない場合、自己判断での服用を中止し、医師の診察を受けるべきとされています。
特に、以下のようなケースでは医療用への切り替えが推奨されます
- 出血が多い、または続く
- 痛みが強く、排便時以外にも違和感がある
- 脱肛など外見上の変化が見られる
- 発熱や全身のだるさを伴う

